人間は、人間だけのコミュニティの中で生きているからこそ、社会性や道徳心といった、いわゆる人間らしさを育むことができる。

だから、たとえ人間として産まれた子供であっても、人間以外の動物に育てられれば、もう人間として生きることはできない。

1920年に、インドのジャングルの中から発見された少女、カマラとアマラは共に生後半年頃に失踪していた人間の子供だった。


発見当時は、カマラは推定8歳。アマラはまだ2歳頃であると思われていた。地元住民の指摘によって、孤児院の関係者が彼女らを捕獲。

おかしなことに、2人は穴ぐらの中で狼と一緒に生活していた。狼は近隣住民にとっても脅威などで、2人の捕獲の際に全滅させられたという。

ともかく、保護されることになった2人だったが、その行動はまるで狼そのものだった。

基本的に暗い場所を好み、瞳は獣のように爛々と輝き、常に四つん這いになって歩いていた。

手足は変形し、まさに狼の前脚のような形状になっていたという。

当然、遠吠えもするし、人間の言葉も分からない。衣服は好まず、たとえどんなに寒くても、裸で冷たい床の上で眠ることができたという。

孤児院の職員たちは、2人に人間らしい教育を施そうと試行錯誤したが、結局、カマラはほとんど言語を覚えることもなかった。

アマラの方は、幾分知能の向上も見られたが、保護から1年ほどした頃に死んでしまった。

孤児院で生活するようになって5年が経過した頃、カマラは二足歩行ができるまでに進歩したが、走る時は四つん這いのままだったという。

カマラは推定17歳まで生き、生涯で覚えた言語は40に達していたそうだ。