人体自然発火現象の被害者となったほとんどの人物は、灰すら残らずに燃え尽きるという。

そして、その一方で、身につけていた衣服や腰掛けていた椅子などは大した被害を受けていないというケースも多い。

これはつまり、人体だけが尋常ではない温度の炎に焼き尽くされてしまうということを意味している。


1954年11月8日午前8時45分。アメリカ・ペンシルバニア州にある一軒家から煙が上がっているのが、周囲の通行人によって確認された。

すぐに、アッパー・ダービー消防署から数名の署員が駆けつけ、この建物の内部に突入している。

ところが、彼らが目にしたのは、到底ありえないような現象であった。

かなり焦げ臭くなった建物の中ではあったが、既に炎は鎮火していたのだ。

まるで、勝手に炎の勢いが失せてしまったかのようだった。

それにも増して妙だったのは、火元と思しき部屋に残されていたものだ。

どういうわけか、この部屋に、女性の両足が転がっていたのだ。

同時に、この部屋には何か大きなものが燃えた痕跡が残されていた。

警察が調査をした結果、足はこの家に住んでいるヘレン・コンウェイ夫人のものであることが判明した。

しかし、肝心のヘレン夫人の体は、とうに燃え尽きてしまっていた。

何故、夫人が突然炎に包まれたのかも分かっていないし、どうして足だけが綺麗に燃え残っていたのかも不明のままである。