1950年代に、フランスでモデルとして活躍したマルセル・ピションという女性がいた。

しかし、時の流れは残酷なもので、若く美しかった容姿が次第に衰えていくと、マルセルは徐々に仕事を手にする機会を失われていった。

中年になった頃にはどうしようもなくなり、そのまま長く極貧生活を送るようになった。


それでもしぶとく生き長らえていたが、1984年に64歳を迎えると、いよいよ生活に困窮するようになってしまった。

電気、水道、ガスなどのライフラインが全て止まってしまい、もう一斤のパンを買うお金すらなくなってしまったのだ。

長く続いた貧乏生活に疲れ果ててしまったマルセルは、とうとう死を覚悟。最後の瞬間まで、じっと小さな部屋の中で暮らしていたという。

やがて彼女の死体が発見される頃には、とっくに死後10ヶ月を迎えていた。

ところが、どうにもおかしな点があったという。10ヶ月も放置されていたにも関わらず、遺体が腐敗していなかったのだ。

その理由は、詳しい検死の結果明かされた。

絶食状態となり、死亡寸前のマルセルは、それでも1ヶ月ほどは存命だったことが分かったのだ。

その間に骨と皮だけの状態になり、ほとんど生きたままミイラ化していたのである。

若い頃は、世界一美しい女性と称されていたマルセル。

その遺体は、少なくとも保存状態的には世界一美しかったということになる。