人体自然発火現象。火の気など一切ない場所に立っている人間から、急に勢い良く炎が立ち上がり、あっという間に焼き殺してしまうという恐ろしい現象である。

その発生原因については諸説あるが、いずれも憶測の域を出ておらず、未だに何故このような現象が起きるのかは分かっていない。

1938年。イギリス・エセックス州チェルムズフォードのダンスホールで、突然火の手が上がった。


火元はキッチンでもカウンターでもなく、1人の女性客の背中だった。

このダンスホールで、恋人と踊っていたフィリス・ニューカムという当時22歳の女性の背中から、突然炎が立ち上がったのだ。

周囲の人々は最初こそ唖然としたが、すぐに消火を試みた。

しかし炎の勢いは尋常ではなく、哀れにもフィリスは恋人の目の前で体中が炎に包まれてしまい、そのまま焼け死んでいる。

同様の事件は、1930年代に他にも1件確認されており、やはり被害者は女性で、発火現象はダンスホールで発生していた。

ちなみに人体自然発火の歴史を紐解くと、その犠牲となったのはほとんどが女性である。

理由はもちろん分かっていないが、共通しているのはいずれの場合も、どんなに消火に躍起になっても炎が消えないという点だ。

人体自然発火現象の発生とは、つまり、被害者の確実な焼死を意味しているということになる。こんなに恐ろしいことはない。