エンリケタ・マルティは、20年にも渡って誘拐殺人を繰り返した女である。

それだけならまだしも、彼女が特異だったのは、その誘拐対象を文字通り「骨のひとつまでムダにしなかった」ところであろう。

エンリケタは、誘拐した子供に売春をさせることを生業としていた。

彼女の顧客はもちろん極度のペドフィリアたちであり、しかも富裕層が多かったという。


そうした客の要望に沿う子供を誘拐し、高額で変態たちの相手をさせていたのである。

しかも、これらの客の中に町の有力者が含まれていたというのだから始末に負えない。

エンリケタの罪が明るみに出る3年前、彼女は一度売春容疑で逮捕されているのだが、なんと起訴されることなく釈放されているのだ。

どうやら、彼女の顧客である有力者が裏から手を回していたようだ。

これだけでも、かなり気分の悪い話なのだが、彼女の恐ろしいのはここからである。

散々変態どもの相手をさせられた少年少女たちは、やがて心身ともに衰弱していった。彼女は、使い物にならなくなったと判断した子供たちを殺害していったのだ。

さらに、彼女はその死体を「有効活用」することを思いつく。殺害した子供たちの死体をバラバラにし、鍋で煮込んで加工。媚薬として顧客たちに販売していたのである。

1912年2月27日。とうとうエンリケタは逮捕され、悪行に終止符を打つこととなる。彼女のアパートに突入した警官たちが見たのは、棚に並べられたおびただしい骨や、瓶詰めになった肉だったという。

そして、逮捕から1年3カ月後に留置場において何者かに殺害されているのが見つかっている。

犯人は明らかとなっていないが、彼女の顧客たちのことを考えれば、想像に難くないだろう。

最後まで、なんとも後味の悪い事件であった。