マーク・チャップマンは、ある意味では世界でもっとも有名な殺人者のひとりと言えるだろう。

なにしろ、あのジョン・レノンを殺した男なのだから……。

1980年12月8日、ニューヨークにあるレノンの自宅前で彼を射殺したチャップマンは、その場で逮捕された。


警察が到着するまでの間、逃げるようなそぶりは見せず、その場で『ライ麦畑でつかまえて』を読むなどして待っていたという。

チャップマンが逮捕されたことで事件はあっけなく解決したかに思われたが、動機がはっきりしないことなどから、さまざまな憶測を呼んだ。

まず、犯行当時に報道されたのはチャップマンがレノンの熱狂的なファンであったというものである。熱狂的なファンの行き過ぎた行動がレノンを死に追いやったと言われた。

だが一方では、これはただの殺人ではないという憶測も存在した。

当時、レノンの反戦運動の政治的影響力は大きく、そのため暗殺説がまことしやかに囁かれていた。

果ては、CIAの催眠により操られていたなどという陰謀論めいたものまで存在したという。

チャップマンは殺人罪で無期刑となった。無期刑とはいっても、20年を過ぎれば仮釈放の申請ができるのだが、これまで一度も通ったことはないという。

その理由は、チャップマン自身に反省や謝罪といった更生が見られないことと、もし釈放されても、レノンのファンから報復で殺されてしまうのではないかという懸念があるからである。