「もう時間だ」
「何の時間なの?」
「お前が死ぬ時間だ」
1966年10月30日、カリフォルニア州リバーサイド。
カレッジの学生で、チアリーダーのシェリ・ジョー・ベイツ(18歳)は、午後9時頃に学内の図書館を出て、愛車へと向かった。
翌朝、彼女の遺体が駐車場からら70mほど離れた場所で発見された。
胸や背中を繰り返し刺された上、喉を切り裂かれていた。強姦でもなく、物盗りでもなかった。

1通目の手紙

殺害から1ヵ月後、リバーサイド警察と地元紙に犯人からの手紙が舞い込んだ。

「彼女は若くて美しかった。だが今では無惨な死を遂げた。彼女は最初でもないし最後でもない。
私は夜も眠らずに次の犠牲者のことを考えている。
もしかしたらそれは、ベビーシッターの仕事を終えて、毎晩7時に暗い夜道を歩いて帰るブロンドかも知れない。
それともハイスクールで私のデートの誘いを断った、スタイルのいい青い眼をしたブルネット。いや、おそらくどちらでもないだろう。
私は彼女の女性の部分(female parts)を切り取って、街中から見えるところに飾ってやろう。だから君たちの姉妹や娘、奥方を暗い夜道から遠ざけたまえ」

手紙はまだ続く。

「ベイツ嬢は馬鹿だった。子羊のように殺人鬼の手に落ちた。あまり抵抗しなかった。だが私は殺った。楽しかった。
私はまず彼女の車の配電器からワイヤーを抜き、図書館の中で彼女を待った。そして2分ほどあとをつけた。その頃にはバッテリーが上がっていた。
そこで手助けを申し出た。彼女は話に乗って来た。
私は言った。通りに車が停めてあるから、家まで送ってあげようと。
図書館の敷地から出たところで『もう時間だ』と私は云った。『何の時間なの?』と彼女は訊ねた。
お前が死ぬ時間だと云ってやった。
私は彼女の顔に腕を回して口を塞ぎ、もう片方の手で喉元にナイフを突きつけた。彼女はおとなしくなった。
その胸は温かく弾力があった。だが、頭の中にはひとつのことしかなかった。これまでずっと私を無視してきた罪を償わせることだ。
彼女はなかなか死ななかった。首を絞めるともがいて振り払おうとし、唇を引きつらせた。悲鳴を上げたので、頭を蹴って黙らせた。
ナイフを繰り返し突き立てたら折れてしまった。最後に喉を切り裂いて仕事を終えた」

メッセージの締めくくりはこうだ。

「私は病気じゃない。気狂いなのだ。だが、だからといってゲームをやめるつもりはない。
この手紙を公表して皆に読ませたまえ。そうすれば夜道を歩く娘たちを救えるかもしれない。それは君たち次第だ。君たちの良心にかかっている。私のではない。
気をつけろ…私は今も君たちの娘のあとをつけている」

2通目の手紙

犯人しか知り得ないことが綴られていたことから、犯人からの手紙に間違いない。
それはタイプライターで打たれていたが、カーボン紙を何枚も重ねてタイプすることで機種の特定を困難にする工夫が凝らされていた。
しかし犯人の予告にも拘らず、本件に類する事件は起こらなかった。

2通目の手紙が届いたのは1967年4月30日。短い手紙がまたしてもリバーサイド警察と地元紙に届けられた。

「ベイツは死ななければならなかった。これからも犠牲者は増える。Z」

また、カレッジの図書館の机に青いボールペンで書かれた落書きを発見している。犯行にリンクするかのような内容だった。

「生きるのはうんざり/死ぬのも嫌だ
 切る
 きれいに
 赤ならば
 きれい
 血はほとばしる
     したたる
      こぼれる
 彼女の新しいドレス一面に
 あ、そうだ
 もともと赤かった
 命が吸い込まれていく
 あやふやな死の中に
 このたびは彼女は死なない
 だが誰かが彼女を見つける
 次の機会を待つがいい rh」

ベイツ事件は二度と起こらないのか。一時的に中断しているだけなのか…。リバーサイドに住む女性たちを凍りつかせたままである。