タイでは、死んでからも成仏できない幽霊のことをピー・ファーと呼ぶ習慣がある。

ピー・ファー自体は特に害もない存在だということだが、凄まじい憎悪を抱いたまま死んだ人間の魂は死後すぐに堕落し、ピー・ポープになるという。


ピー・ポープは全身が真っ黒に染まった幽霊で、霊的な存在を誰もが日常的に目にしているタイでも、非常に恐れられている部類に入るとされている。

日本人からすれば、ただの迷信のようにしか思えないが、実際にピー・ポープによって恐るべき事件も発生しているのだ。

2011年8月22日。タイ北部の比較的大きな村で1000名ほどが参加する大規模な儀式が執り行われた。

経緯はこうだ。

この村の若い男性が18名ほど、たった1ヶ月のうちに次々に蒸発してしまい、あわせて同時期からピー・ポープが頻繁に目撃されていたのである。

そこで、村長のニパン・マートサアート氏は霊媒師をまねき、儀式の折にピー・ポープについての霊視を依頼した。

するとこの霊媒師は、ピー・ポープになってしまった幽霊は女性で、夫になりそうな男性を探して成仏出来ない状態だったことを突き止めたのだという。

厄介なことに、蒸発した男性たちのほぼ全員は、その後無惨な死体となって発見されてしまった。

これも霊媒師によれば、ピー・ポープによって食い殺されてしまった証拠なのだという。

どうも、件のピー・ポープは生前から呪術のたしなみがあったようで、直接除霊しようとしても激しく抵抗して始末に終えなかったようだ。

結局、外部から呪術師を招いて退治してもらい、ようやく村は平穏を取り戻したとされている。